happy m’s

シアワセは空に浮かんでたり、道端に咲いてたり、手の平にあったりするのです。。。

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青い雨

「彼のどこが好きだったの?」
「ヘタレなとこ……だったんでしょうね、たぶん」



by【闇の彩】



『青い雨』



ぽつりと。
小さな水滴が頬に落ちてきて、東湖は顔をあげた。
それが合図だったかのように、水滴が群れとなって地上へ降りそそぎ始める。

静かで細い雨はやがて街を青色に染める。

「東湖ちゃん?」


怪訝そうな……少しだけ心配の気配が混じった南璃の声に、東湖は初めて自分がぼんやりと立ち尽くしていたことに気づく。
南璃は東湖の顔を窺うように覗きこんだ。


「……まだ少しは引きずってる?」


一瞬何を言われたのかわからず、覗きこんでくる南璃をまじまじと見つめ返す。
そして次の瞬間には吹き出していた。
東湖の反応に南璃はすねたように口を尖らす。


「何で笑うの東湖ちゃん」
「ごめん。だって南璃だってわかってるでしょう、そんなわけないって」


そんなわけない。
記憶はそのまま。
性格もほとんど変わらない。
だけど、名前が瞳子から東湖へと変わった。
名は本質を表わす。
比喩でもなんでもなく、そのとおりの意味。
今の私は紫水流の力の一部であって――人ではない。

それでも、こうして音のない雨が降ると想いの残像が胸をよぎる。
けっして感傷ではない。
私はもう瞳子ではないのだ。
それに……変わったのは人のままである彼だって同じで。

傘がなく、雨の中を急ぎ足で立ち去る彼の後姿をじっと見送る。
そんな東湖と彼の後姿を交互に見つめて、南璃は可笑しそうに口元を手で隠した。


「生前よく言われたでしょ。『どうしてあんな男がいいの!?』って」
「言われたわね。自分自身でも思ってたし」
「でもそんなものだよね、恋愛って」
「……」


そう、どうしてこんなやつのために苦しまなければいけないのかと、憎いとさえ思っていたのに――敷かれたレールの上しか歩けなかった弱い彼のことが愛しかった。


「前はダメダメな人だったみたいだけど、今はそれなりに頑張ってるよね。うん、今の赤峰さんなら嫌いじゃないよ私」
「……そうね。私も嫌いじゃないわ。――ただし」


計らずしも二人の台詞がハモる。


「「紫水流の害になると見なしたら速攻殺すけど」」


ほんの数秒だけ真顔になり顔を見合わせる。
それからすぐに声をあげて笑い出した。

今の私は紫水流がすべて。
それが東湖である――今の私。

遠ざかる赤峰の後姿。
遠ざかった過去の私。
東湖はこの雨のように静かな気持ちで見送った。

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[ 2010/09/19 09:41 ] 創作小話 | TB(-) | こめんと(1)
これは「闇の彩(やみのいろ)」というシリーズ。
人に害なすこの世の不可思議で、でも確かに存在する闇を祓う術者・紫水流(しづる)♂と、彼の能力であり従者である人ではない者達4人の話。

その中の、水を支配する東湖(とうこ)と炎を支配する南璃(なんり)、女性型であるお二方の話です。
東湖さんは他の3人と違い、瞳子(とうこ)さんという事故死した元人間でした。
元々水系の能力を持ってたらしく、縁(?)があって紫水流の力の一部となり、東湖として存在してます。
東湖=クールビューティー、南璃=キュートなイメージでお願いします。(笑)

ちなみに、文中に出てくる赤峰(あかみね)さんが、東湖さんが人間だった頃の元カレです。
[ 2010/09/19 10:04 ] [ 編集 ]
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