happy m’s

シアワセは空に浮かんでたり、道端に咲いてたり、手の平にあったりするのです。。。

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【小話】 光の下

「僕は僕なんだけどねぇ」
「……うさんくさすぎるのよ」
 
 



『光の下』



なんの前触れもなく、ことんと沈黙がおりてきた。
いや、二人でいればこういう“間”ができるのは時間の問題だとわかっていたこと。
わたしは静かに、ゆっくりと長く息を吐きだす。
この静寂を攪拌(かくはん)するように。
そして、隣を並んで歩く男を見た。


時刻は21時を少し過ぎた頃。
季節は夜道を歩いても汗ばむこともなくなった秋。
わたし達の頭上には、丸く太った満月。
しとやかな黄金色の光が、昼間よりはぼんやりと、でもいつもの夜よりは濃くわたし達の影を歩道に映し出す。


並んで歩く男は、月の光をその身に纏わりつかせ、うっすらと輝いていた。



まったく、この男は……。



さきほど吐き出したものとは違う種類の息を、わたしは吐き出す。


男は美しかった。
誰をも魅了し、容赦なく惹きつける容姿。
その容姿を際限なく輝かせる、華やかで艶やかでやわらかな笑み。
いつもその身に纏うのは夏の明るい日差しのような、眩しくて陽気な輝き。



けれど。



その裏に潜むのは、酷く冷たい本性。



太陽のすべてを照らす力強く眩い光と、月の見たくないものを隠しその刹那だけでも癒してくれる残酷でやさしい光と。
相反するものを同時に秘めている危うさが、彼の魅力をよりいっそう引き出していて。
まるで光のような存在。


今、彼を包むのはほのかな黄金色の月光。
暖かそうでいて冷たい月の光。
彼の本性そのもの。


「何? もしかして僕の顔に見惚れてる?」
「……確かに、見てて飽きない顔よね」
「それ、褒め言葉と受けとめていいのかな」
「お好きなように」


飽きないどころか、見てると惹きつけられすぎて目が離せなくなる、凶悪なほど美麗な顔のくせに。
そしてそれを誰よりも把握していて、それを効果的に魅せることを知りつくしているくせに。


わたしは意識して彼の顔から視線をはずした。
そうして見上げた先にあるのは、冴え冴えとした月。
どうしても彼の方を見たがる己の目と心を抑え込み、月に視線を固定する。


どっちなのだろう。
太陽の光か、月の光か。
同じ光の下で、こうも印象をがらりと変える男。


「こんな月夜は酒が美味いよね。早く帰って飲もうよ」


彼はそう言って、大事そうに抱えていた酒瓶を軽くかかげてみせる。
どこか子供じみた嬉しげな声に、せっかく逸らしていたわたしの視線が再び彼に惹き寄せられる。
目が合って、彼はにこりと微笑んだ。
その瞳の中に、自分から視線を逸らすことは許さないという傲慢さが見え隠れしている。


「わたしが苦労して取り寄せた銘酒、飲ませるつもりはないわよ」
「えー、一人で飲むより二人で飲む方が美味いじゃないか。つきあうよ」
「勝手に二人きりの方向にもってかないで。飲む相手なら他にもいるわよ」
「ああ、いるね、酒豪な連中が。ハイエナみたいに鼻がきいて、どこからともなくわいてくる連中が」
「ちょっと、ご近所さん達のことヘンな風に言わないでくれる」
「いやあ、充分、ヘンな人達でしょ彼ら」
「あなたにだけは言われたくないと思う」


こういうの、同じ穴のムジナって言うんだよね?とくすくす笑いながら、彼はさりげなく酒瓶を片手に持ち直し、空いた片手でわたしの髪をすくい取った。
その腹が立つほどさりげない仕草に眉根を寄せてから、目を伏せた。
わたしの髪をいじる彼の手に微かに心が震えるのは、怖いからなのか、嬉しいからなのか。
いずれわたしはこの男に捕まってしまうのだろうか。
それとも、すでに手遅れなのだろうか。





わたしが……わたしの本能が求めてやまない光は――。





答えは、この月の光の影に隠してしまおう。
今はまだ。
 
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[ 2012/10/09 19:32 ] 創作小話 | TB(-) | こめんと(1)
久しぶりの…マジで数年ぶりに書いた小話であります。
リハビリのつもりで書いてみたわけですが、よく考えてみたら昔からたいしたもん書いてないやーと思い出し、何も考えないで気楽にやりました。

私の中にある程度できあがった舞台と人物達がありまして、その中のメインである二人の話です。
名前や容姿設定などは小話ということで本文では省略。
彼は人ではなく金髪で青紫色の瞳、とか、彼女は人ではあるけど特殊な存在であり、別の大きな力を持つ存在が同じ身体に共にいる、とかとか(笑)
あいかわらず設定作りは大好きです!

これから少しずつ書いていこうかと思ってますが、予定は未定。
もし書けたら、名前なども出していこうと思います。
…書けたらいいなぁ。
[ 2012/10/09 19:35 ] [ 編集 ]
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