happy m’s

シアワセは空に浮かんでたり、道端に咲いてたり、手の平にあったりするのです。。。

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【小話】灯された、火

「もう少し、その、タイミングというか……考えてくれない?」
「んー、こういうのは本能で動くようなもんだからなぁ」





※BL(女性向け)です。


『灯された、火』



「うおー、さっみー! 真冬ぅーって感じだなぁ!」


部活が終わり、学校の駐輪場から出た友人が開口一番わめいた。
その声は寒さのせいで、強弱が不安定にゆれている。
俺もマフラーを口元に引き上げ、寒さをしのぐ。


師走。
お師匠さまも走っちゃうほど多忙な年末。
世間は忘年会だクリスマスだ大掃除だと騒がしいが、俺のまわりは――少なくとも俺とこの友人は、いつもと変わらず。
テストも終わったし、あとは冬休みを待つのみ。
そろそろ受験の準備に入ってもおかしくないが、まだ俺たちには切羽詰まった焦りもなく、いつもどおり授業を受け、いつもどおり部活に励んでいた。


ただ、それも残すところあとわずかなんだということだけはわかっていた。
年が明けたら、少しずつ変わっていくのだろう。
いまだはっきりと見いだせない将来に向けて、動きださなきゃ……歩きださなきゃいけない。


「なあなあ、このまんまじゃ凍死する勢いじゃん? あったけーとこで何か食おうぜ」
「何か食おうって、おまえ今金欠じゃん」
「うん。だからおまえが俺の分もおごれる金額内で食えるもんでも」
「……たかるな」


なんでもない、幾度となく繰り返されてきた会話。
こんなくだらない、それでも、俺にとってはかけがえのないやりとりも、いったいいつまで続けられるのか。


俺は友人の横顔を凝視しないように気をつけながら、見つめた。
寒さを耐えるように、奥歯を噛みしめている顔。





やだなぁ。
この時間を……彼と共にいるこの時間を失うのは。
彼との何気ない日常を失うのは。






じわりと目がしみてきた。
パチパチと瞬きして、瞳がうるんできたのをごまかす。
違う、これは凍えた夜の冷気のせい。
誰も訊いてない、無意味な言い訳を自分にしつつ、マフラーの中で震えた溜め息をついた。
突然ふってわいた、わけのわからない感傷を振り払うように、俺は視線を前に向けた。
そうして、彼から視線を外した、その時――。


「おい」


声と同時に手袋をした手が、どしっと俺の頭の上に置かれた。
驚いて友人に顔を向けると、予想以上に近い距離にあった瞳とぶつかった。


「――っ! なっ」
「なんで目ぇウルウルさせてんの」


あまりにも心臓に悪い友人の言動に、俺は目を見開いた。
ちょ、ちょっと待て。
え? なんで目がうるんでるのバレた?
っていうか、明るいとは言い難いわずかに届く校舎の明かりだけでなぜ見える!?
そもそも、なんだこの距離!
近い、近すぎるから、顔が!
軽くパニックになった俺だったが、すぐにはっと正気にもどり、じっと見つめてくる彼の視線を押しもどすように強く睨み返す。


「何言ってんの? こんだけ寒けりゃ空気が冷たすぎて目がしみてんだよ」


よかった。
さっきの独りよがりな言い訳は無駄じゃなかった。


「えー、俺なんともないけど」
「俺はそうなの。チャリとか乗って風が目にあたるだけでも涙でる」


自然に切り返せたとほっとしたのも束の間、彼は俺の頭に手を置いたまま、ますます顔を近づけてきた。
息がかかるくらいに。


頼むから。
早くその顔を離してくれ。
胸中で必死に懇願しながら、でも表情にはいっさい出ないよう、そして変に思われないように身動きしないでいたら、心の声が聞こえたみたいに、彼の顔が元の場所にもどってくれた。


やばい。
マジ死にそう。
心臓バクバクして死にそう。
今が夜でよかった。
マフラーしててよかった。
きっと彼には真っ赤になってるであろう、俺の顔ははっきり見えないはず。


ん?
……でも、目がうるんでるの見えたんだっけ?


確認するように彼を窺い見ると、彼はふーっと真っ白い息を吐き出した。
そして、目を細くしてまるで責めるみたいに俺を見返してきた。


「……予定変更」
「は?」
「いや、一部変更」
「なに一部変更て。何か食いに行くんだろ? あったかいもん食べて体あっためるんだろ?」


どこか彼の視線にヘンな予感がして、笑いかける顔を引きつらせながら思わず一歩後ずさった。
が、その時気づいた。
顔こそ離れていたが、彼の手は俺の頭にのっかったままだった。


狼狽える俺に気づいてるのか気づいてないのか、彼はふっと小さく笑った。
それを見てなんとなくわかった。
何か、彼の中でスイッチが入ったのが。
彼は俺の頭上にある手とは逆の手の指を、無造作に俺のマフラーに引っかけてずらした。
その途端に冷気が首を撫でていく。
思わず肩をすくめた俺の動きを制するように、ぐっと頭に置かれた手によって固定された。
次の瞬間――


彼の唇が俺の首に吸いついた。
はじめに軽く噛まれて、それから吸われて、そしてその痕を癒すようにペロリと舐めて離れていった。


「~~~~~~っ!!」


口元を両手で抑え込み、絶叫しなかった自分をほめたい。
なんだこれなんだこれなんだこれ!!
いったい何がどうなってこうなった!!
先ほどとは比べものにならないぐらい動揺しまくってる俺をしり目に、彼は再び白い息を吐いた。
白くて、熱い息。


「なんかわかんねーけど、おまえが何を思ってるかわかったわ」
「っ、何が!」
「おまえが俺のこと大好きだってこと。そんでもって俺も大好きだってこと」
「はぁ~~~~?」
「これからもずっと一緒にいたいんだってこと。おまえも、俺も」
「……」
「そうするために俺は行動するぞ」
「!」


びっくりした。
心からびっくりした。
……そう、どこかで、確かに感じていた。
お互いが大切な存在であることを。
特別な存在だってことを。
だけど、俺は常に一緒にいる仲のよい友人から、たまにメールで近況を報告する程度の友人となり、そしていずれ会うことも連絡しあうこともなくなる元同級生というだけの関係になるんだろう、と諦めていた。
そうなってもしょうがないんだと。
それが当たり前なんだから、と。
今のままの、何の変哲もない関係は月日の流れによって変わらずにはいられない。
せめて一日でも長く今のままでいられるようにと願うしかなかった。
祈るしかなかった。






それなのに、彼は。





そうか。
俺は諦めずに動いてもいいのか。
なんとなく感じていたものを信じればいいのか。
信じて動かなきゃいけないのか。


「……というわけで、あったけーもん食うぞ」
「予定変更じゃなかったっけ」
「だから食うもんがおまえになって、一部変更になったんだろ?」
「ばっ……おまっ、何ボケたこと言ってんの!?」
「うるせーよ、さみーんだから早くあったまろうぜ」


頭にのせられていた手が、宥めるようにぽんぽんと叩いた。
それから何事もなかったかのように歩きだす。
その歩く後ろ姿は、これっぽっちも俺がついてくるのを疑っていなかった。


なんだ、この敗北感。
ちくしょう、一人さっさと火ぃつきやがって。
火がついたのは、おまえだけじゃねーよ。


ちょっとだけ放心してから、俺はほんの少し足早になってる彼を追った。
彼によってゆるんでしまったマフラーをしめなおして。


「おい」
「何」


横に並んでから、真っ直ぐ前を向いたままで。


「どーしてくれんの、これ。さっきのでやばいぐらい火照ってきたんだけど」
「反応よくて嬉しいよ」


一瞬、羞恥で声が詰まったが気を取り直す。
もう、迷わないし、立ち止まりたくない。
変わるなら、俺が……俺たちが望む関係へと変わるために。


「ちゃんと責任とってよ」
「おう、任せとけ」


ちらりと彼の顔に目をやると、彼もこっちを見てきた。
そして、俺たちはちょっとだけ笑って夜道を急いだ。
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[ 2012/12/10 16:08 ] 創作小話 | TB(-) | こめんと(1)
「どーしてくれんの、これ。やばいぐらい火照ってきたんだけど」
という台詞が書きたいために作った小話であります。

今回も名無しでの展開(笑)
前回のは設定とかできてるんですが、これはほんとに何もない。
上の台詞と、制服にマフラーで首にキスかますっていうシチュエーションのみです!

これで読んでいただいた方がそれぞれに妄想してくれたなら、それで満足でございますw
[ 2012/12/10 16:09 ] [ 編集 ]
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